レポート第5号から

緊急雇用創出の1年間も通算の5年にカウントするの?

●<質問>
 我がA市では臨時・非常勤職員は通算5年で雇止めになる。予算や位置付けは別だが「緊急雇用創出」で働いた人が臨時・非常勤に移っているようで、当局から緊急雇用創出の1年間も通算の5年にカウントすると提案された。他の自治体ではどのようになっているか?
●<回答&解説>
 「緊急雇用創出事業」は、厚生労働省の「雇用創出の基金による事業」の3事業の一つで、他に「ふるさと雇用再生特別基金事業」と「重点分野雇用創造事業」とがある。
 「東京都緊急雇用創出事業実施要綱」によれば、国の交付金が根拠で、「失業者に対する一時的な雇用・就職機会の創出及び人材育成」、事業内容は、「民間企業・シルバー人材センター・NPOに委託する委託事業、都自ら実施する直接実施事業、区市町村に補助金を交付する区市町村補助事業」となっている。
 注目すべきは、「知事は新規雇用した労働省が雇用期間終了後に安定雇用に繋がるよう配慮」、「東京労働局及び東京しごと財団等と連携」という条項だ。
 「平成24年度新宿区緊急雇用創出事業一覧」によれば、9つの「災害等緊急雇用対応事業」(戸籍事務や清掃作業を含む)と1つの「地域人材育成事業」が列び、4事業が委託で、新規雇用予定者は63人となっている。
 東京都港区では、当初は臨時職員雇用で1年を超える段階で非常勤化(ただし、賃金は国の交付金の範囲で低い)。本格的な就職を支援するのが目的なので、欠勤(無給)はペナルティーなし。当初は必要とされなかった「職」への雇用なので「戦力」ではなかったが、1年を超えた現在は必要な人員に変化。次の就労のステップとなる「人材育成」要素のない無責任雇用で落胆して辞める被雇用者も少なくない。
 A市は国の緊急雇用対策の予算を使って、一般の臨時・非常勤の人件費を節約しているのではないか。性格が異なる臨時・非常勤の「職」に、緊急雇用対策雇用をあてるのは不適切である。何より必要なのは、「劣悪な臨時・非常勤制度が緊急雇用創出事業も台なしにしている」という観点だ。それは、東日本大震災の被災者雇用でも同様である。緊急雇用創出事業を別な課題とせずに官製ワーキングプア問題の連鎖・拡大とし捉えるべきではないか(港区職労では、被災非常勤を組合員化した)。

(本多伸行)

2013/02/06 up

レポート第5号から

常勤の臨時・非常勤職員には退職手当が支払われる

●臨時教員に課税論争 兵庫、再任用前に毎年退職手当
 2012年9月23日の朝日新聞(ただし大阪本社版のみ)に標記の見出しで、概要、次のような記事が掲載されました。

 「退職」と「任用」を毎年繰り返す臨時教員への退職手当をめぐり、兵庫県教委と税務署の間で、異例のバトルが起きている。「実質的には継続雇用であり、退職手当とはいえない」とする税務署に対し、「現行の法を順守した結果」と反論する県教委。同様の手当を持つ全国の教育委員会が、行方を見守る。
 (2012年6月下旬)臨時教員の源泉所得税を納めていないとして、県教委に納税告知書が届いた。滞納を指摘されたのは2007?10年度に県教委が臨時職員に支払った退職手当に係る源泉所得税で、延べ1530人分。
 臨時教員は地方公務員法上、1年を超えて任用できない。だから同じ人を継続的に任用する場合、県教委は1日以上の「空白期間」を置き、再び任用する形を取る。そのたびに月給の6割にあたる1人平均約15万円の退職手当を払ってきた。
 今回税務当局はこの手当に目を付けた。退職は形だけで、実態は継続的な任用だから、退職手当は所得税法上の優遇措置のある「退職所得」ではなく、課税対象の「給与所得」にあたる、とみたのだ。
 県教委によると、今の制度は50年前の1962年にできた。この間、税務署側の指摘はなかった。同様の制度は33都府県にあるが、(課税)処分例はない。県教委は「税の公平性に反する」などと、4税務署に異議を申し立てた。

●納税告知処分を取り消し 臨時教員への支給は退職手当であることが確定
 臨時教員に毎年度末に支払われていた金銭(約15万円)の性格は退職手当なのか一時所得なのかをめぐって、兵庫県教委と税務署間で争われた論争は、10月1日、税務署が納税告知処分を取り消して決着しました。処分取消し決定にあたり税務署側は、?再任用を希望する教員のすべてが必ずしも再任用されるわけではない、?未消化の年休は繰り越しされない、?再任用までの期間は兵庫県職員としての身分を有していない??などの事実関係を列挙し、「単なる任用関係の延長ではなく、実質的に別の新たな任用関係と認められる」とし、実態的に「退職所得」に該当するとの判断を示しています。(10月2日朝日新聞大阪本社版、同日の東京新聞夕刊)
●臨時教員への退職手当の支給状況
 臨時教員の退職手当の支給状況について、日教組本部にうかがったところ、35都道府県で制度化されているとのことです。これはあくまでも制度上のことで、先の報道によれば、実際に支給されているのは「33都府県」としていますから、北海道では支給していないのかもしれません。また、日教組の調査では制度化していないとされる県でも、退職手当条例では支給しなければならないようになっている県もあります。
 たとえば、奈良県では、一般職の職員の給与に関する条例第25条で「臨時又は非常勤の職員(再任用短時間勤務職員を除く。)に対しては、(中略)予算の範囲内で、人事委員会規則で定める基準に従い給与を支給する」とし、臨時又は非常勤の職員の給与、勤務時間、休日及び休暇の基準に関する規則第2条で、「臨時又は非常勤職員」に対して、「給料、給料の調整額、教職調整額、扶養手当、地域手当、住居手当、通勤手当、特殊勤務手当、超過勤務手当、宿日直手当、夜間勤務手当、休日勤務手当、期末手当、勤勉手当、義務教育等教員特別手当、産業教育手当、定時制通信教育手当及び退職手当を支給することができる」としています。実際に奈良県では、1994年4月から臨時教員に退職手当0.6月分が支給されてきたのです(2005年4月から財政上の理由で廃止)。
●常勤の臨時職員・非常勤職員への退職手当の支給?その根拠
 退職手当を支給されるのは臨時教員だけに限定されていません。教員以外の、一般的な常勤の臨時職員・非常勤職員にも、各々の自治体の退職手当条例に定める要件を満たしていれば、任命権者である国・自治体は、これら職員に退職手当を支払わなければならない立場にあるのです。
 なぜなら退職手当は、退職の事実に基づき受給権者に請求権が発生するもので、国・自治体が支払い義務を負う金銭債務だからです。
 まず、根拠法令を確認しておきましょう。国家公務員は、国家公務員退職手当法(以下、退手法)です。一般の地方公務員は、各自治体で制定されている退職手当条例(以下、条例準則)です。公営企業職員、現業職員は、退職手当の額等は協約事項なので労働協約に基づき定められる企業管理規程又は規則等になります。
 自治体の退職手当条例は、総務省が作成した条例準則をそのまま条例化している例が多いのですが、条例準則は国家公務員との均衡を重視して、退手法に準じています。したがって、支給対象、支給要件、支給月数計算等の取り扱いは、国・自治体共通のものなのです。
●退職手当を支給される常勤の臨時職員・非常勤職員の要件
 以下は、退手法及び条例準則に関する一般的な解説です。
 まず退職手当を支給される臨時職員・非常勤職員は、一般職の職員のみならず、特別職の職員も含まれます。ですから常勤の特別職である裁判官や国会議員秘書、市町村長も退職手当の支給対象者です。
 第2に常勤の職員です。常勤の職員とは、1日7時間45分以上の勤務時間を勤務する者です。
 第3は、第2でいう勤務をした日が月に18日以上あり、その月が12月を超えるに至った者ということです。
 さて、ここからが重要です。
 12月を超えるという要件からすると、6月の期間で1回更新して都合12月の臨時職員には、退職手当は支払われないはずではないかと考えがちですが、退手法も条例準則も読み替え規定を置いています。
 退手法は昭和34年改正附則5項で12月を6月と読み替え、条例準則も昭和37年改正条例附則5項の規定で、退手法との均衡から12月を6月に読み替えているのです。ですから先に示した臨時教員は期間を1回更新し6月を超えた時点で退職手当請求権が発生し、年度末に支払われていたのです。
●退職手当計算上の在職期間
 退職手当額は、退職時の給料月額に、退職理由・在職期間ごとに定められた期間を乗じて算出されます。要件を満たした常勤の臨時職員・非常勤職員が上記の附則5項を適用して退職した場合は、同附則の定めから100分の50に相当する額が支給されます。たとえば月額25万円の職員が在職期間11月で自己都合退職したら、25万円×換算期間0.6年×50/100=7.5万円となります。
 ところが先の臨時教員の例では、50/100は適用していません。それは12月=1年を勤務したとみなされているからです。退手法・条例準則の考え方では、1日の端数は1月勤務とみなされ、6月以上1年未満は1年とみなされるからです(第7条関係)。つまり1日の「空白期間」をおき再度任用しても、その年度の退職手当は1年の在職期間として換算されるのです。
●空白期間を置かない任用は在職期間が引き継がれる
 もうひとつ重要な点があります。任用期間と在職期間は異なるのです。退職した日またはその翌日に再度任用した場合は「退職」とみなされず(19条関係)、引き続き勤務したものとして、在職期間は引き継がれるのです(7条関係)。
 この規定は国の期間業務職員や同様の勤務形態にある地方の常勤的非常勤職員や臨時職員にとって重要です。たとえば期間業務職員の任期は1年ですが、空白期間をおかずに再び任用される運用のため雇用関係が事実上継続し、在職期間の計算も引き続いて在職したものとして取り扱われるのです。
 この点は1日ごとに任用され退職するとされてきたかつての日々雇用職員にも適用されてきました。総務省人事恩給局の「日々雇用の非常勤職員に関する臨時の状況調査結果」(2009年7月1日基準日)では、雇用関係が事実上継続し、常勤職員と同様の勤務時間以上勤務した日が18日以上ある月が引き続き6月を超えるに至った日々雇用の非常勤職員のうち、7,150人(43.1%)の者に退職手当が支給される予定としていました。
●本当に退手法・退手条例通りに支給されているのか。
 上記のように、常勤の臨時職員・非常勤職員(日々雇用職員・期間業務職員)には、退職手当が支給されなければならないのに、実態はどうでしょうか。総務省人事恩給局調査でも、各府省で支給予定としていたのは半分弱です。
 さらに問題は地方自治体です。自治体の退職手当条例は個々の自治体ごとにその内容が異なるので個別に検討する必要がありますが、条例準則どおりであれば、一般職、特別職に関わらず、6月以上勤務している常勤の臨時職員・非常勤職員には退職手当を支給しなければなりません。
 しかし、支払っている自治体は数少ない。本則の「12月を超える」や、とりわけ常勤的非常勤職員に関しては、自治法203条の2、204条がトラップ(わな)となって、支払わなくてよいと勘違いしてきたのではないでしょうか。
 退職手当が支払われていないとすれば、雇用関係が継続していると考えざるを得ません。皆さん、一度、自分達が雇用されている自治体の退職手当条例を検証してみてください。

(本会理事 上林陽治)

2013/02/06 up

レポート第4号から

臨時・非常勤の週休日振替と超過勤務手当

●<質問>
 同じ職場の常勤職員が、日曜日に臨時の出勤をして、代りに翌日の月曜日に休みました。その際、「25%の超過勤務手当がついた」と言っています。私たち非常勤が同様の状況になっても手当がつかないのですが、これはどういうことなのでしょうか。
●<回答&解説>
 労基法における労働時間(日)の原則は「1日8時間以内」「週40時間以内」「週1日又は4週間に4日の休日」で、これを超えたら割増賃金が発生します。公務員勤務(制度)の基本型は「8時間×5日」で、労基法の「休日」を「週休日」と呼びます。なお、公務員制度上の「休日」は祝日や年末年始の休みで、これは労基法に規定のない休みです。
 フルタイムは週休日に勤務をしたら同一週(日?土)に週休日を振り替えるのが一般的で、無理なら当該週の前後に振り替えることになり、どちらも不可能であれば超過勤務手当が支給されます。
 短時間勤務は、週休日出勤によって週40時間を超えるか否かが問題です。超過勤務とするか振替とするかは就業規則次第です。「週に1日」か「4週間に4日」に当てはまれば週休日としては労基法上問題ありません。
 しかし、当該週の勤務が40時間を超えれば、「週40時間以内」を超え、25%の割増賃金が発生します。一方、短時間勤務は週休日に出勤しても週40時間を超えないこともあり、この場合には割増賃金は発生しません。
 ところで、臨時・非常勤の皆さんからの相談に、①1日8時間以上の勤務を別の日の時間短縮で相殺、②就業規則に規定のない週休日の振替、③書類のない(命令なき)週休日の振替、という内容が目立ちます。①は悪質な「超過勤務隠し」であり違法です。②③は法制度的に問題があります。
 とにかく、勤務時間や勤務日の扱いで疑問を感じたら、①「正規」の扱いを確認する、②労基署に問い合わせることが大事です。

(本多伸行)

2013/01/08 up

レポート第4号から

臨時職員にとっての手当や共済組合

●<質問>
 数年来、非常勤職員等への手当支給促進のための「地方自治法改正」や「パート労働法の主旨を入れた法改正」の取り組みが進められ、議員連盟結成や院内集会が開催されています。しかし、私たち臨時職員(地公法22条任用)の処遇改善の方向や動きが見えないのですが、教えてください。
●<回答&解説>
 地公法22条任用の臨時職員でも、短時間勤務なら非常勤と同じく「地方自治法改正」や「パート労働法の主旨を入れた法改正」が改善や救済に繋がります。一方、フルタイム臨時職員(2008年総務省調査では10万人で、全臨時職員の半数を占める)は、本来「準常勤職員」として扱われるべきです。
 その区分ラインの一つは、「1日フルタイム×1カ月18日以上×1年以上」です。これは公務員共済組合と退職手当条例準則の適用基準ラインです。最近、33都道府県(7割)が臨時教員に退職手当を支給しているという新聞報道がありました。この他に、上林理事が本紙でも詳述している「業務内容が同様な非常勤は地方自治法上は常勤」という主旨の判例があります。
 ところで、民間なら勤務時間がフルタイムの4分の3で加入となる社会保険制度が、公務員共済組合では上記のようにハードルが高く不当です。この結果、正規公務員は「特権的」になり、非正規公務員を民間労働者対象の社会保険が抱えるという歪な形となっているのです。

(本多伸行)

2013/01/08 up

レポート第4号から

地方の非正規公務員の増加

~自治労調査より~

●地方の非正規公務員は70万人
 自治労は2012年6月1日を基準日として、自治労加盟自治体における臨時・非常勤職員の任用状況を調査し、「自治体臨時・非常勤等職員の賃金・労働条件制度調査結果(中間報告)」を10月29日に公表しました。
 同調査は、全国の47.2%にあたる845自治体の状況を集約したもので、警察や消防、教員などを除く臨時・非常勤職員の数は30万5896人、正規職員は61万9542人。全体に対する非正規率(非正規公務員数/正規公務員+非正規公務員)は33.1%であるとし、調査からもれた自治体を含めると、全国の「非正規公務員」は70万人と見込まれるとしています。
 自治労では同様の調査を08年6月1日を基準日に実施しており、その時点では推定60万人、非正規率は27.6%としていました。調査対象が異なる(今回調査は首長部局が中心)ので正確なことはいえませんが、この4年間で非正規公務員は少なくとも10万人増加し、非正規率も「4人に1人」から「3人に1人」に拡大したことになります。
 民間労働者における非正規率は、総務省労働力調査によれば、12年4?6月平均で34.5%ですから、地方公務員の非正規率はほぼ民間並になったということなのでしょう。
 非正規率は小さな自治体ほど高く、都道府県の16.6%に対し、町村は38.0%。非正規が正規を上回る自治体もありました。
 勤務時間が正規の4分の3以上、すなわちこの間の裁判例からすれば「常勤の職員」とみなされる非正規は61.2%にのぼります。
 職種別に見ると、学童指導員の92.8%、消費生活相談員の86.3%、図書館員の67.8%、学校給食調理員の64.1%、保育士の52.9%、学校用務員の52.0%が非正規公務員で、正規職員が担うべきとされる恒常的・本格的業務で、権力行政の典型職種である生活保護にかかわるケースワーカーでも、非正規率は1割に達していました。つまり、非正規公務員は、自治体が直接提供する公共サービスの主要な担い手になり、職場に欠かせない存在となっているのです。
 ただし、もはや周知の事実ですが、非正規公務員の処遇は厳しく、時給制では900円未満、月給制では16万円未満が過半数を占め、フルタイムでも年収200万円に届きません。職種別にみると、保育士や図書館職員を含む代表的な6職種では、昇給がない自治体が7割超、期末手当なしは6割前後、通勤費なしは2割超です。1回の任用期間は大半が1年以内で、多くの自治体で任用回数の上限を定めているのです。
●正規から非正規への置き換え
 総務省調査では、04年から08年にかけての4年間で、非正規公務員は約4万3000人増加して約50万人となり、自治労調査では、08年から12年にかけて約10万人増加、70万人となったわけです。数字の正確さはともかくとして、確実に、それも急激に増加しているのです。 *08年調査で総務省調査は勤務期間6ヶ月未満はカウントせず、東京都は臨時職員0人と報告しており、過少申告なのです。
 なぜこのように増大したのか。その要因はただ1点。正規職員から置き換えられているのです。厚生労働省・社会福祉施設等調査と総務省定員管理調査を付け、両者の年度ごとの差異を算出した常勤的非常勤保育士数では、01年から10年にかけて、全国の公立保育所の常勤保育士は5,138人減少しているのに対し、常勤的非常勤保育士は、10,680人も増加しています。つまり常勤保育士から置き換えられ、さらに上回って増加しているのです。
 このような傾向は図書館員、教員などの他の公共サービス分野でも、特徴的に現れています。

(上林陽治)

2013/01/08 up

レポート第3号から

時間外勤務と振替または代休

●<質問>
 当局は当初、「超過勤務手当は手当なので払えない」「時間で返す(別な日に勤務時間短縮)」の一点張りでした。しかし、要求と交渉を続けた結果、以下を回答してきました。これで受け入れるしかないのでしょうか?
(1)勤務日の残業で、行事に参加した場合は超過勤務手当を払う。
(2)勤務のない日に、正規の勤務時間に相当する時間の全部または半分を勤務することを命じた場合は、勤務した日を起算日として、前4週間から後8週間の間で代休および半代休を与える。これを与えることができない場合は、割増報酬を支給する
(3)原則、勤務時間外に勤務を命ずることができないこととするが、業務の運営上必要と認める場合は命ずる(通常の時間外勤務)。その場合、
①正規の勤務時間と時間外勤務の時間の合計が7時間45分に達するまでの時間においては、時間外勤務に相当する時間を限度として他の日に、職務専念義務の免除を与える。この場合は、割増報酬は支給しない
②正規の勤務時間と時間外勤務の時間の合計が7時間45分を越えた場合は、割増報酬を支給する。
●<回答&解説>
(1)常勤なら「週休日の出勤」は、「週休日を勤務日へと振替」が原則だ。「休日の出勤」は「勤務日に代休」が原則である。質問では、「週休日の出勤」も「代休」とされているが、これは、非常勤の「勤務日」「週休日」「休日」の区分が曖昧だからだ。
(2)非常勤の時間外勤務に「職務専念義務の免除」を適用するのは、常勤と全く違う。これも「勤務日」「週休日」「休日」の区分が曖昧なことによる。
(3)「職務専念義務の免除」とは、地公法第35条に根拠を持ち、法律または条例に特別の定めがあれば職務専念義務を免除するというもの。主なものに研修、公民権行使、組合活動、レクリエーションなどがあり、休暇に準ずる制度。だから「振替」や「代休」が命令となるのに対して、職務専念義務の免除は承認となる。つまり、条例に定めを持っていなかったり、申請・承認の書類が作られていない職務専念義務の免除は、地公法違反であり、時間外勤務隠しの労基法違反である。そもそも、労働時間(日)の制度整理が必要で、少なくとも職務専念義務の免除部分は時間外勤務手当として支払われるべきだ。

(本多伸行)

2013/01/08 up

レポート第3号から

非正規国家公務員の状況

 非正規国家公務員の状況に関しては、総務省人事恩給局が毎年7月1日を基準日として「一般職国家公務員在籍統計調査」を実施しており、直近のデータである2011年7月1日現在によると、審議会などの委員、顧問、参与等職員(23,168人)を除き、118,747人の非常勤職員が在籍している。
 府省別にみると、最も多く勤務しているのが法務省で、52,917人(審議会等の委員、顧問参与等職員を除く)。実に非常勤国家公務員の45%は法務省なのだが、実はこのうち49,001人が「その他の職員」に分類されており、これは「保護司」といわれる非常勤の国家公務員で、実質的に無給のボランティアなのである。したがって、法務省における有給の非常勤職員は。3,916人である。
 府省別で次に多いのが、厚生労働省の30,429人で、ここでも最も多い人数として分類されているのが「その他の職員」で25,735人となっている。ほとんどが全国の都道府県労働局および職業安定所(ハローワーク)などで職業紹介関係業務に従事する非常勤職員である。この中でも特に多いのが相談員で、リーマンショック以降の雇用対策として、2008年度から09年度にかけて約6000人増員された結果、09年度で全国の安定所(労働局を含む)に約13,000人が配置され、その後も11年度にかけて約7000人増加し、職業紹介関係業務に従事する非常勤職員の75%を占めるに至った。
 この相談員にも任期があり、任期が更新されないと立場を変えて「カウンターの向こう側」に座り、求職相談をかける側になるという、笑えない話がまん延している。
 中央省庁改革が行われた2001年以降の有給の非常勤職員数(委員顧問参与等・保護司を除く)の推移をみると、01年の154,351人から11年には69,746人へと11年間で約85,000人も減らし、2分の1未満になっている。これは04年に国立大学が国立大学法人に移行したのにともない、職員の身分が公務員から民間労働者へ移行したこと、ならびに、11年に社会保険庁が民営化されたためなどの影響による。
 非常勤職員と常勤職員の割合は、04年を境として、25:75から20対80に変化した。国立大学や国立大学病院等がいかに非常勤職員によって支えられていたということである。
 なお、2000年以前の統計表における非常勤職員数は、たとえば1980年7月1日現在では215,595人(委員等や保護司を含む)、90年7月1日現在では206,815人(同)、2000年7月1日では225,617人(同)で、増減の幅は小さい。03年までは、概ね20万?25万人の範囲で推移していたようである。

(上林 陽治)

2013/01/08 up

レポート第2号から

ワーキングプアの水準とは

●いくら以下ならワーキングプアなの?
 臨時・非常勤職員の場合は直接に、委託事業者の労働者に関しては間接的に、まさに公共サービスの実施者であり、発注者である国や自治体がワーキングプアを作っている、だから「官製ワーキングプア」なのですが、では、働いても豊かになれないワーキングプアの水準とは、どの程度のものなのでしょう。この問いは、自治体の労務担当者から「いくら以下ならワーキングプアなの?」いいかえれば「いくら支払えばワーキングプアという非難を受けずに済むの」という形でよく発せられるものです。ですから、よく気をつけなければなりません。
●相対的貧困基準
 実はワーキングプアの水準について確定的なものはありません。ゆえにいくつかの指標を紹介したいと思います。
 最初は相対的貧困基準です。これは人びとがある社会の中で生活するために、その社会の「通常」の生活レベルからどれほど離れているかという考え方に基づきます。OECDで用いられるもので、世帯収入が最も多い順から低い順に並べて、真中(中央値)にくる世帯の収入を標準とし、その半分以下の収入での生活を「貧困」としています。半分とするのはそれこそ「決め」の問題で、EUは、公式の貧困基準のひとつに中央値の60%を用いています。
 日本の相対的貧困の水準は、厚生労働省が2011年7月12日に発表した2009年調査によると、中央値が224万円でその半分の水準である貧困線は112万円であり、貧困線に満たない割合は16.0%、1985年から4ポイント悪化して史上最悪でした。特に母子家庭の貧困率は50.8%に上っていました。
●生活保護基準
 次は生活保護基準です。この基準については、2008年7月1日に施行した改正最低賃金法により、地域別最低賃金の水準決定にあたり、生活保護との整合性に配慮することが明確化されたことから、一躍、脚光を浴びました。
 地域別最低賃金と比較される生活保護の算出基準は、[12?19歳単身の生活扶助基準第1類+第2類(冬期加算含む)+期末一時扶助+住宅扶助実績値]÷可処分所得率(税・社会保険料分)から求められます。これでは何のことかわからないので、川崎市を例に計算してみましょう。
①生活扶助基準第1類(食費等)
……42,080円/月
②生活扶助基準第2類(光熱費等)
……43,430円/月
③冬期加算(11?3月の期間支給)
……1,288円/月
(=@3,090円×5月÷12月)
④期末一時扶助(年末に1回支給)
…… 1,182円/月
(=@14,180円÷12月)
⑤住宅扶助実績値(平成22年度川崎市
「生活保護の概況」より算出)
……36,266円/月
 (住宅扶助総支給額 10,577,428,887円÷月平均実保護世帯数24,305世帯÷12月)
∴(①+②+③+④+⑤)×12÷0.857=
1,739,734円
●国税庁民間給与実態統計調査に基づく基準
 相対的貧困基準と生活保護基準は世帯収入を基本とします。収入には様々なものがあるわけですし、考え方のベースは生活保障です。これに対し「ワーキング」という以上、働いて得られる賃金をベースにせざるをえません。これに該当する統計は、国税庁の民間給与実態統計調査から得られます。2010年分の民間給与実態調査では、給与所得者の平均給与は、412万円(対前年比1.5%増、6万1千円の増加)で、男性507万円、女性269万円でした。
 先の相対的貧困での「標準の半分以下が貧困」という考え方を用いると、平均給与の412万円がワーキング上の標準で、その半分以下の206万円が貧困線=プアラインとなります。
●どの基準が適当か
 ほかにも指標となる水準や基準の考え方はあるでしょうが、主要には上記の3指標でしょう。このうち生活保護基準は、1人世帯の19歳以下で、子どもを産み育てるという生活を保障しているわけではないことに注意が必要です。相対的貧困基準はこれ以下ですから、ワーキングプアのものさしとしては不適当です。したがって簡易的とはいえ、最低でも国税庁民間給与実態統計調査に基づく基準=約200万円を用いることが適当だと考えられます。

(上林 陽治)

2013/01/08 up

レポート第1号から

官製ワーキングプアとはなにか

●メディアを通じて広まる
 官製ワーキングプアという用語は、私の知るかぎり、当時朝日新聞記者だった竹信三恵子さんが、07年に掲載された地方自治体の臨時・非常勤職員をめぐる記事ではじめて使ったものです。実情を見事に言い当てたこの用語は、その後、多くの方々に使われ、広まり、私たちの研究会の名称にもなりました。
 官製ワーキングプアとは、「働く貧困層」といわれるワーキングプアに、「官製」をくっつけたものです。
 ワーキングプアという用語そのものは、元々はアメリカで広がっていた事態を表すもので、日本では、06年7月に、NHKが「ワーキングプア 働いても働いても豊かになれない」を放映して以降、その番組の衝撃性ともあいまって広まっていきました。その番組の中でNHKはワーキングプアを「働いているのに生活保護水準以下という人」を指す言葉として使い、全国で400万世帯以上いるとしていました。
●「官製」ってなに?
 では、くっつけられた「官製」ってなんでしょう。それを考えていくと、国や自治体がどこにワーキングプアを作っているのかがわかります。図をご覧ください。これは自治体を念頭に置いて、公共サービスをどういう仕組みで誰が提供しているのかを示したものです。
 公共サービスは、自治体が実施するものと自治体が調達するものに区分されます。
 自治体が実施する公共サービスは、自治体が正規公務員と非正規公務員を雇って直接実施する直営サービスと、民間事業者、公社・事業団、第3セクター、NPOなどに自治体の業務を委託し、請け負わせ、又は一定の事業に対し補助金や事業費を給付するというサービスとに区分されます。
 一方、自治体が調達する公共サービスは、公共工事や製造等のように市場から技術等を購入するものと、物品そのものを購入するものとに区分されます。
 業務委託請負や公共工事請負には共通点があって、多くの場合、自治体は(競争・指名)入札等を通じて、実施者を決定(落札者)し、自治体と落札者は契約を締結し、委託金や工事代金が支払われるのです。
●ワーキングプアの水準とは?
 問題は、このような多様な形態で提供される公共サービスに従事する者がワーキングプア層であることです。
 たとえば臨時・非常勤職員の報酬は、ワーキングプア層のボーダーラインといわれる年収200万円に達しているでしょうか。1日8時間、週5日、52週にわたり休みなく働いて年収200万円に達するには、最低でも時給962円が必要です。多くの臨時・非常勤職員の時給単価はこの水準に達していません。
 委託請負業者や指定管理者で働く労働者も同様です。そこで働く労働者の多くは非正規労働者で賃金が低いのです。例えば某市立図書館の委託事業者に勤務する図書館員の時給は840円で、これは法定最低賃金+4円という水準なのです。委託事業者がそれほど儲けているわけではなく、入札の結果とはいえ、某市から支払われる委託料が低すぎるのです。
 つまり臨時・非常勤職員の場合は直接に、委託事業者の労働者に関しては間接的に、まさに公共サービスの実施者であり、発注者である国や自治体がワーキングプアを作っている。だから「官製ワーキングプア」なのです。

(上林 陽治)

2013/01/08 up

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