雇止め訴訟に関する重要判例


●日立メディコ事件

判旨概要:当初20日間の期間を定めて雇用しその後期間2箇月の労働契約を5回にわたり更新してきた臨時員に対し、使用者が契約期間満了による雇止めをした場合において、右臨時員が季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものでなく景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で雇用されるもので、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、右雇止めの効力の判断に当たっては解雇に関する法理を類推すべきである。
ただし、本件に関しては、事業場やむを得ない理由によりその人員を削減する必要があり、余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、工場の臨時員全員の雇止めが必要であるとした使用者の判断が合理性に欠ける点がないと認められるなど判示の事情があるときは、右臨時員の雇止めが行われたことをもって当該雇止めを無効とすることはできない、とした。
裁判所名:最高裁判所第一小法廷
裁判年月日:昭和61年12月4日
事件番号:昭和56(オ)225
判決文:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130838219690.pdf


●東芝柳町工場事件

判旨概要:契約期間を二か月と記載してある臨時従業員としての労働契約書をかわして入社した臨時工に対し、5回ないし23回にわたって労働契約の更新を重ねたのちにいわゆる雇止めの意思表示をした場合において、右臨時工が景気の変動による需給にあわせて雇用量の調整をはかる必要から雇用された基幹臨時工であって、その従事する仕事の種類、内容の点において本工と差異はなく、その採用に際しては会社側に長期継続雇用、本工への登用を期待させるような言動があり、会社は必ずしも契約期間満了の都度直ちに新契約締結の手続きをとっていたわけでもなく、また、従来基幹臨時工が二か月の期間満了によって雇止めされた事例は見当たらず、自ら希望して退職するもののほか、そのほとんどが長期間にわたって継続雇用されているなど判示の事情があるときは、右雇止めの効力の判断にあたっては、解雇に関する法理を類推すべきである。
裁判所名:最高裁第一小
判決年月日:昭和49年07月22日
事件番号:昭和45(オ)1175
判決文:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121959053082.pdf


●長野県農事試験場事件

事件概要:被上告人長野県は、農事試験場を長野市から須坂市に移転することとしたため、上告人に対し、1975年10月中旬ころ、任用を二月末日限りで打切る旨を通告し、同日経過後は、日々雇用の任用を更新しなかった。そこで上告人は、①日々雇用の非常勤職員としての取扱いによって受けてきた賃金上の差別に伴う未払い賃金、②右差別取扱い及び退職の強要により蒙った精神的苦痛に対する慰籍料の各支払い、③職員たる地位の確認、④予備的に退職金の支払いを求めて訴えを提起した。
判旨概要:任命行為とは厳格な要式行為である行政行為であるから、任命権者による任期の定めのない職員にするとの任命行為がない以上、期限付任用がいかに長期間更新されたとしても、任期の定めのない任用に転換するものではなく、解雇権濫用法理のような私法上の法理は、公務部門にはあてはまらないという原判決を維持。
公務員の臨時・非常勤職員の場合は、任命権者の任命行為があって初めて任用され、任用予定期間満了をもって退職することが予定され、当然には更新しないという考え方を示したもの。
裁判所名: 最高裁第一小法廷
判決年月日: 昭和62年6月18日
事件番号: 昭和59年(オ)第345号
判例集:『労働判例』504号、p16、
判決文:http://www.chikouken.jp/hanrei/12-H1.PDF



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